蒼い心と秋の空

移り変わりの多い蒼のブログです~話題いろいろであります。

愛するゆえに その1 

犠牲を美としない太公望の闘い
仙界大戦ではたくさんの犠牲の上で成り立った
戦いであった。


幼馴染の普賢はじめ
武成王…
各仙人の犠牲の上で

一つの闘いが幕を閉じた。


その後の話である――


「太公望師叔、お怪我はありませんか?」
「うむ、心配はいらぬ。それよりも再び周軍を率いて朝歌に向かうことになるが…しばし休みをとる。それぞれ心と体を癒すが良い。」

金鏊列島と崑崙山の落ちた瓦礫のそばで
それぞれの仙道がちりぢりに去っていく。
その中で楊戩だけは太公望の傍から動かなかった。

「なんだ、おぬしも休める 特に今回の戦いのほとんどがおぬしの功労の賜物であるからのう。おぬしには感謝しても感謝したりぬ。」

太公望は労ってか楊戩の手を握る。

「…。」

くっと楊戩は口をつぐむ、顔に哀愁が漂う…二人の間に沈黙が続く…。

「太公望師叔 あなてはこれからどうするおつもりですか?」

沈黙を破るように、楊戩が口を開く。
これ以上続くと 感情の糸がプッツリと切れそうだったからだ。

「…わしは その他、こまごまとした雑用があるでのう…。」
「それが終わってから…僕のところへ……」
「すまぬ、楊戩。しばらくの間独りにしてくれぬか。」

太公望は顔をそらすように伏せる。
楊戩ははっとして、1歩、あとさずりした

「すみませんでした。」

そういうと、楊戩は太公望の傍を離れた。



「太公望は?」

呆然と空を見つめる楊戩の姿をみて、太乙真人が話しかけてくる。

「……まだ、向こうの瓦礫の方にいます?1人にしてくれと…」
「そうかい…暫く お話でもしないかい? 君には興味があってね。」

というと、ニヤニヤしながら大きな岩の上にストンと腰を落ろす。

「…。」

何を考えてるか読めないこの人は苦手だ…無言のまま鼻を鳴らしあからさまに不機嫌な態度で楊戩は太乙の側に座った。
南の方で蝉玉の土公孫を探す声が聞こえる。

「ねぇーダーリン知らない?さっきまでいたんだけどなぁ?」

「にしても、今回は大変な闘いだった。私の友人もほとんど逝ってしまって…」

そう言うと懐かしむように目を閉じる。
この人の言動はときに理解し難い
楊戩は苦虫を噛み潰したような顔になる。

「それぞれの仙道達は、今 自分の師弟や友人の死で心を痛めている。でも太公望はそれ以上に心を痛めていると思う。なんといっても大戦は自分が引き起こしたよつなものだと思ってるからね。彼は…あの子は見た目ほど強い子じゃない。」

太乙の形容する太公望の人称が「太公望」から「あの子」に変わったのを聞いて楊戩はムッとした。

「まぁ…そんな大役を君にやってくれとは言ってないが…。」

そんな楊戩の思いとは裏腹に、太乙は言葉をつむぐ。

「君にもう少し太公望を思う気持ちがあるのなら、今すぐ、彼のところに行ったほうがいいと思うよ。」

そう言うと太乙はずいっと楊戩に顔を近づけ、ニッコリと微笑んだ。
その笑顔に楊戩はドキリとする。

(この人はどこまで僕の気持ちを知ってるんだ?)

「話はこれだけだ、引き止めて悪かったね。」

太乙はポンッと楊戩の背中をたたいて、立ち上がってその場を去っていった。


「愛するものが生きているっていうのは 羨ましいもんだ」

楊戩が視界から外れると、太乙はポツリと呟いた。
そして、空を見上げ 封神台の方へおもむろに深々と礼をする。
顔を上げた時 目から一筋の涙が零れた…。

彼方からは蝉玉の土公孫を探す声が大きくこだましていた。



(続く)
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